水疱性角膜症の病態と治療

2. 水疱性角膜症の原因

水疱性角膜症に至る角膜内皮障害の原因として、以下が挙げられます。

Fuchs角膜内皮ジストロフィ

SLC4A11遺伝子、COL8A2遺伝子など複数の遺伝子の変異が報告されている優性遺伝子疾患である。両眼性に角膜浮腫、角膜混濁が進行し、水疱性角膜症に至る。欧米では水疱性角膜症の主たる原因疾患である。

先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィ

遺伝性の角膜内皮疾患で、角膜混濁による片眼又は両眼の視力障害をきたす。早期の角膜移植が必要となる。

特発性角膜内皮炎

単純ヘルペスウイルス、帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス等による角膜感染症とされるが、原因不明の症例も少なくない。角膜浮腫によるかすみ目、角膜混濁、視力低下などの症状を呈し、角膜内皮炎が進行すると水疱性角膜症となる。

角膜ぶどう膜炎・角膜実質炎

ぶどう膜炎や角膜実質炎により角膜内皮障害が続発し、水疱性角膜症に至ることがある。

偽落屑角膜内皮症

角膜に偽落屑物質が沈着し角膜内皮が障害を受け、角膜内皮細胞が過度に減少すると水疱性角膜症となる。偽落屑症候群による続発性緑内障はLOXL1遺伝子との関連性が示唆されているが、本疾患との関連性は不明である。

偽水晶体水疱性角膜症

眼内レンズ挿入後の角膜内皮の直接的損傷、水晶体超音波吸引術の過剰使用などいくつかの要因で続発性に発症する。とくに、術前の検査で角膜内皮細胞密度が低いと水疱性角膜症のリスクが高くなる。

レーザー虹彩切開術後水疱性角膜症

緑内障・浅前房の手術で使用されるアルゴンレーザーによる虹彩切開後に、レーザーにより内皮細胞が障害を受け脱落することにより水疱性角膜症に至ることがある。

網膜・硝子体手術後

網膜・硝子体術後に水疱性角膜症が続発する場合がある。

角膜外傷など

参考文献
  • 1)木下茂ほか.角膜内皮障害の重症度分類.日眼会誌. 118(2).81-83.2014.
  • 2)大橋裕一「専門医のための眼科診療クオリファイ12角膜内皮障害 to the Rescue」中山書店.2012.
  • 3)陳栄家ほか.レーザー虹彩切開術後の水疱性角膜症の組織病理学的組織.日眼会誌103(2).129-136.1999.
参考