水疱性角膜症の病態と治療

3. ビズノバ®による治療

試験概要

目 的

水疱性角膜症患者を対象として、培養ヒト角膜内皮細胞(CHCEC)を前房内へ移植する治療法の有効性と安全性を検証的に評価する。

対 象

水疱性角膜症患者 12例12眼

主な選択基準

  • 最良矯正視力が0.5未満
  • スペキュラーマイクロスコープにて角膜内皮細胞が観察できない、もしくは角膜内皮細胞密度が500個/mm2未満
  • 角膜厚が630μm以上、かつ角膜上皮浮腫の存在
  • 20歳以上の成人

デザイン

多施設共同、非盲検、非対象試験

方 法

培養ヒト角膜内皮細胞(CHCEC: Cultured Human Corneal Endothelial Cells)1×106個/眼を患者の前房内へ移植

主要評価項目

移植後24週における角膜内皮細胞密度1,000個/mm2以上の達成

副次評価項目

  • 移植後24週における角膜厚630μm未満、かつ角膜上皮浮腫の消失
  • 移植前から移植後24週の角膜厚変化
  • 移植前から移植後24週の最良矯正視力(logMAR換算視力)改善の有無(移植前と比較してlogMAR換算視力にて0.2以上の向上を改善ありとした。)

安全性評価項目

有害事象・不具合の発現と重症度

試験成績

主要評価項目

移植後24週に角膜内皮細胞密度が1,000個/mm2以上を達成した被験者の割合は100.0%(12例中12例、95%信頼区間:73.5%~100.0%)であり、二項割合の正確な検定(有意水準:片側0.025、閾値割合を10%)において、統計学的有意差が認められた(vs. 1,000個/mm2未満、p < 0.001)。

副次評価項目

移植後24週における角膜厚630μm未満、かつ角膜上皮浮腫の消失した被験者の割合は、75.0%(12例中9例、95%信頼区間:42.8%~94.5%)であった。

移植前(登録時)から移植後24週の角膜厚の変化量の平均値は−189.3μm(95%信頼区間:−263.6μm~−114.9μm)であり、変化率の平均値は−22.7%(95%信頼区間:−28.6%~−16.9%)であった。

移植後24週にlogMAR換算視力改善が見られた被験者の割合は100.0%(12例中12例、95%信頼区間:73.5%~100.0%)であった。

安全性

有害事象の内訳は、眼障害では眼痛4例(33.3%)、眼瞼炎、黄斑浮腫及び角膜障害各1例(8.3%)、それ以外では上咽頭炎4例(33.3%)、便秘3例(25.0%)、下痢及び眼圧上昇各2例(16.7%)、上腹部痛、口内炎、肝機能異常、毛包炎、胃腸炎、インフルエンザ、歯周炎、脂質異常、肝機能検査異常、糖尿病、坐骨神経痛、鼻漏及び湿疹各1例(8.3%)であった。

副作用は12例中5例(41.7%)で9件であった。副作用の内訳は、眼痛4例(33.3%)、黄斑浮腫、角膜障害、肝機能異常、脂質異常及び糖尿病各1例(8.3%)であった。

効能又は効果・用法及び用量

効能又は効果:水疱性角膜症

<効能、効果又は性能に関連する使用上の注意>

  1. 臨床試験に組み入れられた患者の背景(眼の状態等)について、【臨床成績】の項の内容を熟知し、本品の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。
  2. 本品の使用に際しては、視力等の予後を考慮し、本品移植の要否を判断すること。

用法及び用量:

角膜輪部に切開創を作成し、眼内灌流液で前房内を維持、灌流しながら角膜内皮剥離器具にて角膜後面にある変性角膜内皮細胞及び細胞外マトリックスを剥離、除去する。その後、本品灌流液にて灌流(100μL/回、2回程度)する。作成した切開創を縫合する。次に、角膜輪部から前房内に注射針を穿刺し、本品灌流液を吸引除去する。その後、角膜内皮細胞剤300μL(1.0×106個)を前房内に移植する。細胞移植後は細胞接着を促すために患者にすみやかにうつむき姿勢を取らせ、3時間その姿勢を保持する。

<用法及び用量又は使用方法に関連する使用上の注意>

  1. 細胞移植後うつむき姿勢をとる必要があるため、手術は原則として局所麻酔により行うこと。
  2. 本品パッケージは、使用直前まで輸送容器に入れた状態、または2~8℃(遮光)の貯蔵条件で保管すること。
  3. 角膜内皮細胞剤を移植する前は、ピペッティングなどにより角膜内皮細胞剤が充填されたチューブ内の細胞濃度を均一にしてから移植用シリンジに吸い取ること。
  4. 使用後の残液等は各医療機関の手順に従って適切に廃棄すること。
参考文献
国内第Ⅲ相検証的医師主導試験(CHCEC-301試験)【承認時評価資料】